自粛 + 長雨 ~ 猛暑 ・・・
このような夏を迎えることを、年の初めに予想できた人はいたでしょうか?
我々を取り巻く環境も大きく変わって、何もかもが中止・・・
もうそれが当たり前のような、
3月・4月頃にはよく聞かれた、「苦渋の決断」 などという言葉もなくなりました。
《山百合》 ムカシは境内の至る所に自生していたのですが、近年ほとんど無くなってしまいました。
球根がイノシシの大好物だから
そんな中で迎えた「お盆」、 檀家さんへの棚経も中止、と決めたお寺も多かったようですが、私は 「マスク、アルコール消毒等できるだけの対策を施して予定位通り伺います。 ただし、中に入ってもらいたくないお宅はその旨連絡いただくか、外に張り紙をしておいてくれれば、玄関口でお経をあげさせていただきます」と前檀家さんに伝えました。
結果として約200軒中、4軒の方から申し出がありました。 この方たちも、それなりの勇気が必要だっただろうと思いますし、お互いを尊重できたこともヨカッタ、と思います。
《クリスマスベゴニア》
『自粛』 によって、改めて気づかされたこともいっぱいあります。
失ったものもあるけれど、これによって得られたこともある。
ただ 一僧侶として 「坊さんは楽をしてはいけない」、と常に思っています。
中止、と決めてもいいけれど、「ならば何をする?」 が大切だと思うのです。
《ゼフィランサス》
そんな中で、今年も 『川施餓鬼』 を迎えることになりました。
子どもたちを集めての1日行事はできないと判断しましたが、伝統行事としての「川施餓鬼」はやる、と決め、その前の法要は 『施餓鬼会』を執り行うこととしました。
『施餓鬼会(せがきえ)』 とは 餓鬼の世界に落ちて苦しんでいる 精霊(しょうりょう)にお経とともに食べ物や飲み物を施す法要です。
飾り付け等の支度も大変、それに法要はたっぷり1時間、所作も複雑で私は15年前の修行時代にやったきり、息子をコーチに特訓を重ねました。
『施餓鬼会』
8月16日、16時半、開式です。
「施餓鬼檀」の周りをお経を唱えながら廻り、食べ物・ 水 ・ お香 を施す・・・
たくさんの人に来てもらいたいけど、あまり来られたら困る・・・という複雑な思いでしたが、結果40数名。
全員マスクを着けて、席を離して座っていただきました。
法要の灯をタイマツに点火するための儀式
お題目の中、点火!
川に到着。 卒塔婆とともにタイマツを炊き上げる。
川で亡くなった霊、 ここに纏(まつわ)る 有縁・無縁(うえん・むえん)の精霊(しょうりょう)に全員で焼香。
今年も、「伝統の灯」を燃やすことができたこと、とってもヨカッタ・・・
《カサブランカと桔梗》
「川施餓鬼」は私にとって1年で最も大変なイベントですが、
今回の「施餓鬼会」もそれに勝るともおとらない大変さ。
準備もさることながら、本番の暑さは まったく想定外でした。
扇風機10台廻して本堂内は35℃。
おまけに私は導師の衣装に燕尾(えんび)と呼ばれる帽子のようなものを被り、それで所作や言葉を間違えないかと緊張もしているし、何リットルの汗をかいたやら・・・
それに続くタイマツの行列も、マスクで大声、それに大型の太鼓・・・
出発してお寺に戻るまでの1時間余り、お経を唱え続けです。
スタッフにお礼を言って、解散して、ペットボトルのお茶を2本一気飲みしてようやく 「終わった~」 と実感しました。
翌日、「施餓鬼会」に供養されたすべての食べ物をミキサーで完全に粉砕し、使用した旗や飾り物、卒塔婆を焚き上げ、その灰と飲み物とともに川に供養して、すべてが終了!でした。
コロナのおかげで良き体験をさせていただきました。