山寺の
和尚さん日記

喜捨

3ケ月ほど前のことです。 小学校時代の同級生の女の子(と言っても62歳ですが・・・)から ℡があって・・・
勤め先の 有料老人ホームに 最近入居されたMさん(75歳)が ご主人の 月命日にお経をあげてくれるお坊さんを探している・・・ とのこと、 日蓮宗、と聞いて 幼馴染の私を思い出してくれたのだそうです。
「で、誰か心当たりある?」と言うので
「僕でよかったら 行かせてもらうよ」 と答えたのです。
こういうご縁がいただける ってこと、 お坊さんになって よかったな~ と思いました。




それから、ホームを訪ね、一緒にお経をあげ、お彼岸や 花まつりには Mさんが 興徳寺に来てくれて、 
そして先月・・・

お経の後、
 「大震災で 両親を亡くした子どもたちと、
それから 被災したペットのために 
少し寄付したいのだけど、
今度、東北へ行く時 持っていってもらえませんか?」
と申し出られました。 
3度も流産して、子どもはできなかったこと、
その代わりに ずっと犬を飼ってきたこと、
「年金暮らしの 年寄りのすることですから 
大したこともできませんが・・・」
 と付け加えられました。

その数日後、
お寺に いきなりMさんが 現れて、 
銀行から卸したばかりの お札の入った封筒を差し出され、
「200万円あります。100万円を東北へ、
残りを本堂の改修工事に使ってください」と・・・
ビックリしましたが、 ありがたくお預かりし、Mさんの意に沿うべく、調査を始めました。 
そして 福島のペットを収容している施設と、石巻市の 震災遺児奨学金に 取り次ぐべく、その旨伝えると、
ナント その3日後、 さらに300万円を・・・

「ちょうど 満額になった定期が500万円あって、 奨学金の話を聞いたら すっかり嬉しくなって・・・ 
全部持っていってください、 流産した子どもへの 罪ほろぼしです。 あぁ~、すっきりしたッ」
 
本当にサバサバした表情でした。
決して裕福な方ではないと思います。 
でも 老人ホームの費用は 年金で賄えるので、 その他には 何のお金も 必要ないとのこと、
 「明日にでも死んでしまうかもわからないのだし、」 と・・・



喜捨という言葉があります。 もともとは 仏教の 「四無量心;慈・悲・喜・捨」 という4つの言葉から きたものと思われますが、
 
「捨てる」 ということは とても大事なこと。
何を捨てる? 執着を・・・です。
捨てるために 必要なのは、 勇気ではなく 覚悟。
気持ちよく捨てられたら、 楽になるでしょうね、