山寺の
和尚さん日記

初体験

母と暮らしていて ここから先は入れない、という 未知の領域があります。
トイレ、お風呂場 etc.・・・ですが そういう場所のことよりも、この先 母の介護を考えるうえで どうしても避けて通れないのが、いわゆる 「下の世話」・・・
父の最期の頃は 私が すべてを行っていましたが、 潔癖な母は 果たして受け入れるだろうか? 
そんなことを 漠然と考えていました。




その日が 突然に 否応も無く やって来ました。
 
39℃を超える高熱で トロンとした母に 部屋を温かくし こまめに水分を補給しつつ 汗をかいたら 全部脱がせて 下着を替える、という作業を繰り返す・・・
母は けっこうオッパイの大きな人でしたが 数十年ぶりに再会し、 ドギマギしながらも 少し感動しました。 
紙オムツを交換し、熱いタオルで拭いて すかさず乾いたタオルで拭く・・・
 
ベッドは 数年前、特製のマットに合わせて大工に作ってもらったもので、 我ながら 気に入っていたのですが このときばかりは、介護ベッドが便利、と思いました。
おかゆを スプーンで口に運ぶ、水を呑ませる、 そのために 上半身を起こしたい、
でも 普通のベッドでは これが なかなか難しい。 
また下着の交換にも 手こずりました。  
左腕に裸の女を抱きかかえ 
お互いの顔をほぼ接触させて シャツを着せるのですが 
このポジションは かなり刺激的、 
知らない人が 飛び込んだら 「シッ、シツレイ~」 
なんて言うかな? 
などと笑ってしまいました。 

おかげさまで 当初は 背負って歩いていたのが、両手を支えてあげれば 歩けるようになり、
昨日はとうとう独自歩行へと、 今回の 大きなヤマ場を超えたのでした。
終わってみれば あっと言う間のできごとでしたが 私にとっては ウキウキと嬉しくも楽しい 4日間でした。 



熱も完全に下がったので 昨夜は 久しぶりにお風呂へ・・・
脱衣所で 服を脱がし、そのままの勢いで 私も浴室へ・・・ タオルにシャボンを泡立てて、背中~腕、オッパイまでは されるがままでしたが・・・ 下半身に移ったら、 膝をピタッと合わせて、開かない・・・ 
それもケッコウな力です。 

あ~ 恥じらいも 順調に戻ってきている・・・
私は 無言で タオルを母に渡しました・・
最初の頃、パンツ式のおむつを 寝たまま脱がせた際、 大便が母の足についてしまい、そこからシーツや布団カバーを汚してしまったことがあります。
その後始末をしている私に 母は「ありがとう」と 一言、 
実に優しい配慮だと思いました。 
「アンタにこんなことさせて 申し訳ない・・・」などと言われたら 困ってしまいます。

かくして 私の「初体験」は ハッピーな瞬間を積み重ね 
母の笑顔で 幕!
「初体験」 
それは 少しばかりの 不安 と ときめき・・・
でも、初めてのキス にも似て、
誰も教えてくれなくても 何とかなるものだと 
知りました。
母と私、
これからも ほどよいバランスで保たれていくことでしょう。
  
3日前の富士山、 昨日~今日は 雨。  富士山に雪が 降って 美しい雪化粧に 期待しています。