山寺の
和尚さん日記

モノの価値

前回のブログで 「忙しい!」の代わりに「大変!」って言葉はオモシロイ、と言ってくれた読者の方がおりました。 
私にとって 昼間檀家さんを廻って 夜 お塔婆を書く、のは自分で決めていることなので 大変でも何でもないのですが 今回は最後にお葬式が入ったので、チョイ大変! お盆のときは 2つ重なったので メチャ大変! でした。
 
お彼岸のお経廻りと80枚のお塔婆書き、何とか明日で終わりそうです。



エツコさんというお檀家さんがいます。 83歳のひとり暮らしの上品なおばあさんです。
昨年の夏、熱中症で家の中で意識を失ったところへ 東京に住む息子の嫁が 墓参の帰りに寄って発見し 救急車を呼んでくれて 一命をとりとめました。
いわば命の恩人である そのお嫁さんに 自分の持っている指輪をあげたい、と お盆のお経廻りに伺ったとき 話してくれました。 そのときに 一番いいやつはやれないけど それ以外の中から選ばせる、というので どうして その一番いいのをあげない? と聞くと・・・
亡くなったご主人が 毎晩のようにお酒を飲んで午前様、 それを見かねた近所のおばあさんが 「思い切って 高い指輪を買っちゃいなさい」とアドバイスしてくれたそう、 その時に家中のお金をかき集めて 買ってしまった思い入れの深い指輪なのだそうです。
値段が ナント当時の百万円。
御主人も 信頼していたおばあさんのアドバイスとあって 意外にあっさりと同意してくれたそうですが 「50万円、と言っときましたけど」な~んて・・・ 
でも それから 御主人も 随分変わったそうです。

「これは死ぬまで、手放さないつもりです」と言うので 
「ケチなこと言わないで その一番いいやつを明日あげたら?」と言うと 
「そんなこと考えたこともなかったけど そうか・・・」としばらく考えてから・・・
「よっしゃ そうしましょッ!」と。 
その指輪を見せてもらいました。 
大きなひすいの周りに小さなダイヤ4個をあしらっただけの
シンプルで 上品なデザインのものでした。
 
その指輪を エツコさんの左手の薬指にはめてあげて 「もうこれでお別れだから 明日まで つけとくとイイヨ、あなたの手から 嫁さんに指に移してあげて・・・」
おちゃめなエツコさん、とても喜んで「明日はデーサービスだけど このままつけて行こうッと・・・」

今回 お彼岸で伺って まず最初に
「ネッ、あの話 どうなった?」 と聞くと
「『ありがとうございます』って・・・」 
「それだけ?」 
「それだけ・・・」
アメリカ人のお嫁さんには 少し地味だったか?
 「値段言った?」
「言うわけないですヨ~ でも 気持ちはとってもスッキリしました、 本当にありがとうございました」と 心からの笑顔で・・・
モノの価値は 人によって まったく異なります。
煩悩を断って ホトケ様に また一歩近づきましたネ、エツコさん!

「でも 値段 言ってやった方が よかったんじゃないかな~?」 などと 和尚の方が未練たらしい。


*《富士山ピース&アートフェスティバル》の協力をするので 銀行口座を教えて欲しい、という連絡をいただきました。 ありがとうございます。   
 富士宮信用金庫 001 普通口座 1130124 富士山ピースフェスティバル実行委員会 代表 長沢正義
 振り込んで下さった後に 必ず ご連絡ください。 入場券は郵送させていただきます。 ヨロシク。
明後日 9月22日、 10時より 興徳寺の『彼岸会』 お近くの方、どうぞ。  「法話」は 『私 ありがとう』、の予定。原稿書きとリハは 明日午後、 「ウ~ン チョイ大変!」